舌下免疫療法
舌下免疫療法とは
舌下免疫療法はアレルゲン免疫療法の1つです。スギやダニなどの物質(アレルゲン)が体内に侵入すると、人によって免疫システムが過剰に反応して鼻水、くしゃみ、かゆみなどのアレルギー症状が現れます。アレルゲン免疫療法はアレルゲンを体に少量ずつ投与していくことで体がアレルゲンに慣れていき、アレルギー症状を軽減していく治療です。内服薬や点鼻薬などで症状を和らげる治療とは異なり、アレルギーを根本的に治すことができる唯一の治療です。
以前は皮下注射での「皮下免疫療法」が行われていましたが、注射のため痛みを伴い、頻回に通院が必要でした。
現在では少量のアレルゲンを舌下(舌の下の部分)に投与する舌下免疫療法が主流となり、簡便なため自宅でも行うことができるようになりました。
舌下免疫療法は1日1回薬の服用を長期間(3ー5年)継続することで、アレルギーの症状を軽減したり、アレルギー体質を改善したりすることが期待できます。
舌下免疫療法で期待できる効果
舌下免疫療法を長期に継続することで、以下のような効果が期待できます。
- 鼻水の改善
- 鼻づまりの改善
- くしゃみの改善
- 目の痒みの改善
- アレルギーの薬の減量
- 生活の質(QOL)の改善
どのくらい効果があるか?
舌下免疫療法を長期的に継続した2割の方が薬がなくても無症状(根治)となり、6割の方が症状が軽減しました。残念ながら2割の方には効果がありませんでした。つまり、舌下免疫療法を行なった8割の方が舌下免疫療法の効果を実感しています。
いつ効果が出るか?
舌下免疫療法は即効性のある治療ではありません。薬を毎日飲んで少しずつ体をアレルギーに慣らしていくことで、体質を改善する治療です。効果が出るまでに少なくとも数ヶ月はかかります。
どのくらい効果が続くか?
短期間の舌下免疫療法では効果が持続しません。3年間以上治療継続した場合は効果が長期的に継続するとされており、4〜5年間の治療を推奨しています。治療終了後何年も経過すると効果が切れてくる場合がありますが、その場合は1〜2年追加で舌下免疫療法を行うことで効果が戻ります。
舌下免疫療法の副作用
主な副作用
- 耳・鼻・のど・口の腫れ、かゆみ、不快感など
- 咳
- 下痢や嘔気などの消化器症状
上記のような副作用が出ることがありますが、症状は軽いことが多く、舌下免疫療法を継続していくうちに副作用も現れなくなることがほとんどです。
重大な副作用
- ショック
- アナフィラキシー
重大な副作用として上記が考えられますが、発症することは非常に稀です。舌下免疫療法で生命に関わるアナフィラキシー例の報告はありません。
舌下免疫療法の対象となるアレルギー
舌下免疫療法の対象となるアレルギーは
- スギ
- ダニ
の2種類です。他のアレルギーは舌下免疫療法の対象にはなりません。
舌下免疫療法の対象とならない方
- アレルギー検査でスギ、ダニが陰性の方
- 5歳未満の小児
- 重症の気管支喘息の方
- 重症のアトピー性皮膚炎の方
- がん治療中の方
- 過去に皮下免疫療法で大きな副作用が出た方
- 抜歯後や口内炎などで口の中に傷のある方
- ステロイド内服薬を常用している方
- 妊娠中の方、授乳中の方
舌下免疫療法導入の流れ
舌下免疫療法をご希望の方は、まずは外来を受診してください。Web予約より順番予約がお取りできます。
症状やご要望を詳しくヒアリングし、鼻内の状態を診察します。
アレルギー検査を受けたことがない方はアレルギー検査(血液検査)を受けて頂きます。アレルギー検査の結果は1週間程度かかります。
過去に他院でアレルギー検査を受けたことがある方は、検査結果をご持参ください。
アレルギー検査の結果と舌下免疫療法の適応の有無をご説明します。
舌下免疫療法の適応となる場合は、舌下免疫療法初回投与の予約をお取りします。
舌下免疫療法の導入はスギ花粉の場合シダキュア2,000JAU錠、ダニの場合ミティキュア3,300JAU錠を1週間服用します。
舌下免疫療法はアレルゲンを投与する治療法のため、アレルギー反応による副作用が出る可能性があります。そのため初回投与は必ず院内で行います。処方された舌下錠を院内で服用し30分間お待ちいただきます。再度診察し、問題がなければ翌日から自宅で内服して頂きます。
自宅で1週間服用してから再診して頂きます。
大きな副作用がなければ、2週目からスギ花粉の場合シダキュア5,000JAU錠、ダニの場合ミティキュア10,000JAU錠に薬を増やします。
薬を増やしてから2週間後に再診して頂きます。
大きな副作用がなければ、以降は1ヶ月毎に受診して頂きます。
安全性の確保のため処方は最大1ヶ月分までとなります。副作用の確認のため必ず毎月診察が必要です。
舌下免疫療法の注意点
舌下錠の服用方法
舌下錠を舌の下に置きます。すぐに溶けますので、そのまま保持して1分後に飲み込んでください。その後5分間は飲食やうがいはしないでください。
舌下錠の服用時に避けること
舌下錠の服用前および服用後2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴は控えてください。
舌下免疫療法の開始時期
スギ花粉症の方はスギ花粉の飛散時期(1月〜5月)に舌下免疫療法を開始すると、副作用が出る可能性が高くなるため、1月〜5月からの開始はできません。
ダニの舌下免疫療法はいつでも開始可能です。ただし、スギ花粉症を合併している方は花粉飛散時期を避ける方が良いでしょう。
当院で行う舌下免疫療法の特徴
安全に舌下免疫療法を継続していただくために、処方は最大で1ヶ月分までとなります。服用の状況や副作用の有無を確認するために、月に1回は必ず受診して頂けることが、舌下免疫療法を始める条件になります。月に1回の受診を最低3年間は継続していただく必要があるため、この毎月の通院が舌下免疫療法の最大のデメリットであるとも言えます。薬をもらうためだけに何時間も待たなければならず、通院を継続することができずに舌下免疫療法を挫折してしまうという話をしばしば耳にします。
当院では通院の負担を少しでも軽減するために、舌下免疫療法中の患者様にはデジスマアプリの利用をお願いしております。デジスマアプリから受付していただければ、順番を優先して診察を行いますので、待ち時間はほとんどありません。さらにデジスマ払いを利用していただくことで、会計待ちもないため、院内滞在時間を非常に短くすることが可能です。
舌下免疫療法の費用
舌下免疫療法は保険適応の治療です。3割負担の場合、お薬代、診察料、管理料などを含めて2,000円〜3,000円程度です。小児は公費負担です。
舌下免疫療法のよくある質問
- 舌下免疫療法を希望していますが、予約は必要ですか?
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初診時に舌下免疫療法を開始することはできません。まずは外来を受診して頂き、診察のうえ舌下免疫療法の適応を判断します。舌下免疫療法が適応となる場合は、舌下免疫療法初回投与の予約をお取りします。
- 通院の頻度はどれくらいですか?
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安全に舌下免疫療法を継続していただくため、月に1回は必ず受診して頂き、服用の状況や副作用の有無を確認します。当院では通院が負担にならないように、舌下免疫療法中の患者様は優先して診察を行なっておりますので、待ち時間はほとんどありません。
- スギ花粉とダニの舌下免疫療法は併用できますか?
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スギ花粉症とダニの舌下免疫療法は併用することが可能です。
- スギ花粉とダニの舌下免疫療法は同時に開始することができますか?
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スギ花粉症とダニの舌下免疫療法を同時に開始することはできません。まず片方を開始し、1ヶ月以上経過して問題がなければもう片方を開始できます。最初は朝と夜で分けて投与し、1ヶ月以上経過して問題なければ5分間隔の投与が可能です。
- 毎日同じ時間に服用しなければいけませんか?
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服用する時間を決めておくことで飲み忘れの防止になりますが、その日の予定に合わせて服用時間が変わっても問題ありません。