睡眠時無呼吸症候群・CPAP

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に何度も呼吸が止まる、または弱くなる病気です。睡眠時に無呼吸や低呼吸の状態が10秒以上続き、1時間に5回以上起こると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。日本では、成人の約5〜9%(約900万人以上)が睡眠時無呼吸症候群であると推定されており、特に中高年男性ではその割合が20%を超えるという報告もあります。

睡眠時無呼吸症候群には主に以下の2つのタイプがあります。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):気道が物理的に塞がることで呼吸が止まるタイプ。肥満や顎の構造、扁桃肥大、鼻づまりなどが原因となります。(全体の約90%以上)
  • 中枢性睡眠時無呼吸(CSA):脳の呼吸中枢が正常に働かないタイプで、心不全や神経疾患が関係することがあります。

睡眠時無呼吸症候群の症状

主な症状

睡眠時無呼吸症候群は本人が気づきにくい疾患ですが、次のような症状がみられることがあります。

  • 大きないびき
  • 睡眠中の呼吸停止(家族から指摘されることが多い)
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 日中の強い眠気や倦怠感
  • 集中力・記憶力の低下

引き起こされる合併症

また、上記の症状が続くことで、生活の質が著しく低下するだけでなく、次のような合併症を引き起こすことがあります。

  • 高血圧
  • 心筋梗塞・狭心症
  • 脳卒中
  • 糖尿病
  • 不整脈・心不全

特に、SAS患者の約30〜50%が高血圧を合併しているとされており、心筋梗塞や脳卒中のリスクも健常者の約2〜4倍に増加することがわかっています。

睡眠時無呼吸症候群の検査


簡易検査

自宅で手軽に行える検査で、小型の機器を装着し呼吸状態や酸素飽和度、いびきなどを記録します。睡眠時無呼吸症候群の有無や重症度を大まかに把握できます。

検査費用は3割負担の場合、2,700円程度です。

精密検査(終夜睡眠ポリグラフィー

簡易検査の結果によっては、より詳細な検査として終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)を行う場合があります。脳波・筋電図・心電図など多項目を測定し、睡眠状態を詳細に調べることで正確な診断が可能です。従来は検査のために入院が必要でしたが、現在では在宅で行える検査機器の導入により、自宅での精密検査が可能です。

検査費用は3割負担の場合、11,000円〜12,000円程度です。

睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸症候群の治療は、症状や重症度、原因に応じて異なります。

主な治療法として

  • CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
  • マウスピース療法
  • 外科的治療
  • 生活習慣の見直し

の4つがあり、それぞれについてご紹介します。

CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)

中等症〜重症の睡眠時無呼吸症候群に対する治療法です。CPAP装置から気道に空気を送り込み、睡眠中の気道閉塞を防ぎます。継続使用で日中の眠気が90%以上改善するとされており、心血管病変のリスクも有意に減少します。

CPAP治療中は月1回の定期的な受診が必要となり、費用は3割負担の場合、月額4,500円程度です。

マウスピース療法

軽症の方や、CPAPに適応しにくい方には、下顎を前に出す形で気道を広げるマウスピースを装着する治療法があります。マウスピースの作成は歯科で行います。


外科的治療

鼻中隔弯曲や扁桃肥大、アデノイド肥大など、構造的な異常が原因の場合には、外科的手術を検討します。鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎などによる鼻づまりに対しては当院で手術が可能です。扁桃肥大やアデノイド肥大を認める場合は、対応可能な医療機関にご紹介させていただきます。

生活習慣の見直し

  • 減量(肥満がある方)
  • 飲酒・喫煙の制限
  • 横向きに寝る習慣
  • 睡眠時間の確保・就寝リズムの安定

睡眠時無呼吸症候群の検査から治療までの流れ

STEP
外来予約

睡眠時無呼吸症候群の検査・治療をご希望の方は、まずは外来を受診してください。Web予約より順番予約がお取りできます。

STEP
外来受診

睡眠に関する症状や日中の眠気などのお悩みを詳しくヒアリングします。ファイバースコープで鼻やのどに気道閉塞の原因となる病気がないか検査を行います。

STEP
自宅での簡易睡眠検査

自宅での簡易睡眠検査を行います。検査機器は業者からご自宅に郵送されます。機器を装着して就寝していただき、検査が終わったら機器を返送していただきます。

STEP
検査結果説明

検査から約2週間後に外来を受診してください。簡易検査の結果と治療適応の有無をご説明します。

※簡易検査の結果により精密検査(終夜睡眠ポリグラフィー)が必要となる場合があります。

STEP
CPAP導入

重症の睡眠時症候群と診断された場合はCPAPの適応となります。

専門の業者がCPAP装置をお届けに伺います。使用方法の説明を受けていただき、治療を開始します。

STEP
定期通院

CPAP開始後は使用状況の確認や治療効果の判定のために月1回の定期的な受診が必要です。

当院ではCPAPの定期受診の場合は診察の順番を優先しておりますので、待ち時間はほぼありません。(※CPAP定期受診以外の受診時は順番通りの待ち時間となります。)

睡眠時無呼吸症候群・CPAPの費用

当院で行う睡眠時無呼吸症候群の検査・治療は全て保険適応です。

検査

スクロールできます
検査名自己負担額(3割負担)
簡易検査約2,700円
精密検査(終夜睡眠ポリグラフィー)約11,000〜12,000円

治療

スクロールできます
治療名自己負担額(3割負担)
CPAP(持続陽圧呼吸療法)約4,500円

睡眠時無呼吸症候群・CPAPのよくある質問

通院の頻度はどれくらいですか?

安全にCPAP療法を継続していただくため、月に1回は必ず受診して頂き、使用状況や治療効果の有無を確認します。当院では通院が負担にならないように、CPAP療法中の患者様は順番を優先して診察を行なっておりますので、待ち時間はほとんどありません。

CPAPは一生使い続けなければなりませんか?

CPAPの使用を続けることで無呼吸を防ぐ効果が得られますが、睡眠時無呼吸症候群が根本的に治癒するわけではありません。体重の減少や手術により無呼吸が改善すれば、医師の判断のもと使用を中止できる場合もあります。

子どもにも睡眠時無呼吸症候群は起こりますか?

小児ではアデノイドや扁桃の肥大が原因で無呼吸になることがあります。成長障害や学習障害につながる恐れがあるため、早期発見・治療が重要です。

他院で既にCPAP治療中ですが、当院での通院に変更することは可能ですか?

ご使用中のCPAPの機種や患者様の治療状況により対応できない場合がございます。ご希望の場合は、まずは外来を受診していただきご相談ください。検査結果や紹介状などがあれば受診時にご持参ください。